懐かしい雰囲気を纏う居心地良い古本屋
水曜文庫
市原 健太さん
Kenta Ichihara
リポーター 白土 優羽さん
静岡県出身、静岡県立大学国際関係学部
趣味・好きなもの:猫・犬などの動物、よさこいを踊ること
店内を埋める本、そしてその魅力は、ひとりの力で集まったものではない
古本屋である水曜文庫さんでは、大勢のお客さんがこれまで売ってくれたたくさんの本によって構成されて、店主の市原さんがこれらの本と店内の棚を整理してきました。店の奥まで並んだ何段もの蔵書に囲まれてみることをおすすめします。あのころの隠れ家の記憶がよみがえる人も要るのかもしれません。新書と違い、一冊一冊がかつてどこかの本好きの方が「選んできた」本たちなので、本そのものに個性があり魅力的でおもしろいと市原さんは言います。
お店の名前とともに「居場所」を引き継いだ市原さん
商店街を巡るたびに気になっていたここの店名「水曜文庫」。その由来を聞いてみると、市原さんのご実家でお母さまがはじめた小さな図書館のお話しを聞くことができました。近所の子どもたちを家の中に呼び、読み聞かせをしたり、本を貸したりしていました。その図書館の名前が「水曜文庫」。当時は公共の図書館が少なかったため、自宅を利用した図書館は珍しいものではなかったようですが、その頃の静かでもあり賑やかな記憶(おもいで)が、今の古本屋の名前だけでなく暮らしの中の「居場所」としての役割も引き継がれているように感じられました。
街の喧騒から少しだけ距離を置いた空間
しずてつの新静岡駅から歩いて来られる距離にあり、この北街道鷹匠側はクルマも人も多いにぎやかな通りに面しています。しかし、店内に流れる時間は少しゆっくりと進んでいると感じました。
取材日は12月の寒い日でしたが、ストーブの柔らかなあたたかさも市原さんの人柄も私の心に残る素敵な空間でした。日々、時計に急かされているような生活を送っていませんか?そんなあなたにこそ訪れてほしい古本屋です。
水曜文庫について:
2024年2月で11年目に入った「水曜文庫」は、鷹匠2丁目の北街道沿いにある古本屋です。元々、大手の新刊書店に勤められていたオーナーの市原さんが、家族の事情で退職され、この場所で2013年1月に古本の書店を開業されました。「街中でいろいろ探して、結果的にこの鷹匠にお店を決めました」。市内のお客様が多く、イベントなどがあると遠くからも来ていただくお客様もあるそうです。
商品について:
間口2軒ほどの店内は、奥に広く、天井も高いため本屋さんというより図書館のイメージ。「希少本を取り扱っているのではなく、一般的な本を取り扱っています」と市原さん。比較的、この静岡の郷土史に興味を持った方が多いそうです。「どうしてもお客様が不要になった本が集まるようになりますが、本好きの人が選ばれた本はおもしろいものが多いと実感しますね。高齢の方が一つのことにこだわり調べるための本は、みなさんが買うような本であっても広く深く調べようとした気持ちも伝わってきます」。こうした持ち主の性格やその当時の気持ちが表れるのは古本ならではなのかも知れません。
ご自身の経歴について:
新刊書店には20年以上勤務されていた市原さん。「当時は古本に詳しいわけではなかったですが、その頃から東京神田には年に一度ほど足を運んでいました」。この水曜文庫を始めた頃に比べ、古本から何かを学ぼうとする人は減ってきているようにも感じているそうです。しかし、取材中も書店の入り口に置かれた文庫本を中心としたセール本にふと足を止める人は決して少なくありません。お店に一歩足を踏み入れると、本棚に置かれたいくつもの本に、何かを感じる人も少なく無いのではと感じます。
北街道・鷹匠について:
「ここは街中では無い分、ざわざわしていないし、お客様も来やすい場所かなと思います」。鷹匠はもちろん、道路を挟んで駿府町側にもいろいろなお店があるのも好きなのだそうです。「本を買っていただくことも大切ですが、本を売っていただくことも大切にしたいと思っています」。いろいろなお客様にご相談いただきいろいろな出会いがあることを大切にされているのが感じられます。
市原さんの子どもの頃、今は亡きお母様が自宅で毎週水曜日にだけ開館していた『水曜文庫』。成長し、長く新刊書店で働き、そして自分の書店を開店した市原さん。そのお母様の思い出は今もこの鷹匠のお店に、一冊一冊の本館に息づいているように感じました。
水曜文庫
住所 | 静岡県静岡市葵区鷹匠2丁目1-7 |
TEL | 054-689-4455 |
営業時間 | 10:00-19:00 |
定休日 | 月曜日 |
URL | https://www.suiyoubunko.com/ |